■はじめに
産業保健師の働き方には「委託」「常駐」「直雇用」など、 初めて聞くと少しわかりにくい言葉が多いです。
私は現在、委託の産業保健師として1社に常駐しています。 前職は1500人規模の企業で保健師4人体制(9:00〜17:45勤務)、 現職は3000人規模の企業で保健師2人体制(9:00〜17:30勤務)です。
この記事では、 委託産業保健師とは何か? 常駐とはどう違うのか? を、現役の私がわかりやすく解説します。
■委託産業保健師とは?
委託産業保健師とは、 クリニックや健康支援会社に雇われながら、企業の健康管理室で働く保健師 のことです。
委託には大きく2つの働き方があります。
● ① 委託だけど“常駐”するパターン(=私の働き方)
雇用主はクリニックですが、 勤務先は企業の健康管理室です。
私はこの働き方で、 週5日・9:00〜17:30で1社に常駐しています。
学校でいう“保健室”のような場所で、 もう1人の保健師と2人体制で働いています。
前職は1500人規模の企業で保健師4人体制、 現職は3000人規模の企業で保健師2人体制です。
● ② 巡回型(複数企業を回るパターン)
1日で複数の企業を訪問し、 短時間の面談や衛生委員会対応を行う働き方です。
■直雇用の常駐との違い
「常駐」と聞くと、 企業に直接雇われている(直雇用) と思われがちですが、実は違います。
常駐には2種類あります。
- 委託常駐(=私の働き方)
- 直雇用の常駐(企業の社員として働く)
私は直雇用の経験はありませんが、 仕事内容は似ていても、 雇用主が違う という点が大きな違いです。
■委託常駐の良いところ
委託常駐の良いところは、 その企業のルールさえ理解すれば仕事が進めやすいことです。
- 就業規則
- 復職の流れ
- 書類の扱い
- 年齢構成
- 特殊業務の有無
こうした企業の特徴をつかめば、 仕事が安定してきます。
また、私の場合は前職も現職も人間関係が良好で、 保健師同士の連携が取りやすい環境でした。
■委託常駐の大変なところ
委託の大変なところは、 企業から無理な依頼をされても断りづらい場面があることです。
ただし、実際にはっきりと断ったり強気な態度を取ったりすることはできません。基本的には、健康に関するアドバイスや法的に必要な面談などの対応は行いますが、会社の規定で決まっている事柄については、産業医の意見はあくまで意見として扱われ、最終的な判断は会社に委ねられる、というのが実際のところです。私が経験しているのはあくまで委託という立場での業務なので、もし直雇用で保健師や産業医をされている方がいたら、人事など社内の判断に委ねる部分は意外と同じかもしれないな、と感じています。このあたり、直雇用の方の実際の感覚もいつか聞いてみたいです。
ちなみに、私の同僚に、以前は直雇用で保健師をしていた方がいます。詳しい理由までは聞けていないのですが、その方は「もう直雇用はいいかな、今の委託の働き方でいい」と話していました。実際にどちらも経験した人がそう感じているというのは、なかなか興味深いなと思っています。
これは委託かどうかに関わらず、産業保健の仕組みそのものに言えることなのですが、具体例を挙げると、休職後の復職の場面です。私が勤めてきた2社とも、復職するための基準を会社側が独自に設けています。そのため、主治医が「その基準には合致していないけれど、条件付きでなら復職可」という内容の診断書を出してきたとしても、そもそも復職に至らないケースが多いです。他にも、主治医が社員への配慮を求める診断書を提出してきて、産業医も「できればこの配慮のもとで業務にあたれるよう調整してほしい」という意見を出したとしても、会社側でその業務環境を実際に用意できなければ、診断書や産業医の意見が通らないこともあります。
また、委託という働き方には、そもそも法律上のルールもあります。業務委託契約では、業務を指示するのはあくまで委託元(私の場合はクリニック)であり、企業側が委託先の労働者に直接指示を出すことはできない、という決まりです。これは「偽装請負」を避けるためのルールで、企業が委託スタッフに直接指揮命令をしてしまうと、実態として労働者派遣にあたるとみなされ、法律違反になってしまう可能性があります。こうした決まりがあるので、基本的に企業側から委託の私たちに、何でも強制的に業務を依頼できるわけではありません。とはいえ、どんな会社にもあることですが、現場では臨機応変に動かなければならない場面も出てきます。それでも、大きな業務についてはこうしたルールがきちんと守られているので、何でも一方的に押し付けられる、ということは基本的にないと感じています。
また、同じ“常駐”でも企業によって保健師の人数や求められる役割が違い、
- 1500人で4人体制
- 3000人で2人体制
といったように、 企業規模や業務内容によって体制が大きく変わります。
■委託元(クリニック)のフォロー体制も重要
委託元(私の場合はクリニック)のフォロー体制は会社によって大きく違います。
- 常駐保健師に丸投げに近い会社
- 営業担当が企業と一緒に業務を詰めてくれる会社
どちらも存在します。
■同じ委託元でも“委託先によって働き方が全く違う”
私と同じ企業に所属していても、 別の企業に常駐している保健師は、私とは全く違う働き方をしていました。
- 求められる業務量
- 委託元のフォロー体制
- 企業の文化・規模
- 保健師の人数配置
- 委託契約の内容
これらによって、 同じ“委託常駐”でも働き方が大きく変わります。
委託産業保健師を目指す場合は、 「委託元の方針」と「企業の特徴」の両方を見ることが大切です。
■まとめ
委託産業保健師は、 雇用主は委託会社、働く場所は企業 という少し特殊な働き方です。
私は委託常駐として、 1500人規模 → 3000人規模の企業を担当してきました。
委託は大変な部分もありますが、 企業のルールを理解すれば仕事が進めやすく、 人間関係にも恵まれればとても働きやすい環境です。
産業保健師を目指す方の参考になれば嬉しいです。
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